サイトの動機とターゲット: 中間層の充実

1. 概要

昔から一貫している,私のコンピュータビジョン業界への達成目標は,『日本のコンピュータビジョン業界における,中間層の充実』である.「中間層数,層をぶ厚く,なおかつハイレベルにし,主人公となれる人数をより増やすこと」が,私の一貫した外向きの活動における狙いである.ここでいう「中間層」とは,「初級者とトップ層のプロを除いた,ほとんどの方々」を指す.

このサイトの構築や,学会運営活動などの「皆様の下支え的な活動」で,これまでずっと意識してきている点も「初心者・若手層の底上げ」や「中間層の皆様の,更なるパワーアップ支援」である.

私もこれまで,先人の研究者の方々に,大変お世話になってきた.それもあってお返しの気持ちも込めて,「次は自分が次の世代に貢献する番だ」という志のもとで,このサイトや,他の学習支援活動に取り組んでいる.

そして,こうした学習支援活動や,コーチングなどの育成を担当する際の私は,一番下のサポートの立場に回り,こじんまりコツコツ働きながらも,皆様がより良い方向へ進み,実力向上を支える活動に,より重きをおきたい.広く中間レベルの多くの皆様向けに,コーチング役や,中級知識や中級ノウハウを提供する役割を,今後目指していきたいと考えている.

2. 日本の国全体を見渡した時の課題意識

機械学習分野に限らないが,産業社会の現代において,強くて幸せな国には「多くの中間層が存在して,所得レベル・実力レベルのバランスが取れている」ことが欠かせない.

海外の各産業国のような,昔から根強い階級制度・社会は,日本には(見かけ上だけではあるが)存在せず,一見すると,住んでいるところも,見た目も,全員さほど違いがない.これが日本の戦後社会の特徴である.実際,高度成長期中盤以降からバブルの頃は,日本人はいわゆる「一億総中流」の分布であった(これも,ある種の幻想ではあったかもしれないが).

それが,日本の「失われた20年」において,弱国化政治が一貫して行われてきたせいで,すっかり中間層が取り払われてしまい2極化が激しい (グローバリズム系の国全てが抱える問題点である).日本でも,各ビジネス業界は,上流層と下流層に大きく2極化されてしまった.これはホントによくないことである.2極化はピラミッド構造が強くなり過ぎると,少数のカースト上位層だけが大半の富や機会を享受してしまうことになる.そのように経済面でもアンバランスであるが,我々のような専門職でも,各自のスキルや経験からしてアンバランスである.上下の激しい格差は,2極化や対立思考を招きやすいのも問題である.そもそも「グローバル化」の過度な進行が根本原因であると思うので,日本以外も多くの国が抱える問題ではある.

ただ,そういった近年の状況でも,私の場合は,やっていくことにブレは生じない.過去と同じく,引き続き「中間層の充実」を目指した支援を行っていく.それによって,近年の日本社会の各種アンバランスさの緩和に,なんとかまず自分の業界に対してでも貢献していきたい.そのために,このサイトの構築・拡大や,本の執筆や動画講義の公開などを行っていきたい.今後は,研究業だけを行うのではなく,学習支援・コーチ業にも,仕事の重点を置く.

3. 「学習支援」も万能ではないと考えている

私は自分のこのサイトのような活動を「学習支援」と呼ぶようにしており,一般に言われる「教育」という呼び方はしないようにしている(※「教育」という言いかたは,押し付けや洗脳・統制的なので,好きではない).教育より自発的で,自由な「学習」が身に付くことが,皆様の個々のビジョン,そして組織のビジョンをもとに,おのおのが自分独自の高い価値や使命に対して,最大限の力を発揮するために,重要と考えるからである.ガイドブック的で探索を促すこのサイト構造が示すように,自由に自分の行きたい方向へ各々進んでほしいと願っている.「旅は道連れ,世は情け」である

そうはいっても,「学習支援活動を頑張れば,日本・世界の社会問題の解決がうまく達成できる」というような,綺麗な因果関係が成り立つと思っている「理想主義者」ではないのが私でもある.学習支援だけで,全ての問題が解決すると思うのは,幻想(=現実的でない)と考えている.

そもそも,社会全体の変動には,政治や流行,裏ではたらく力など,さまざまな要因がある.よって,学習支援を頑張るだけで,全てが解決するわけではない.また,個々人の成長も,コーチや師匠が助けられる範囲にも限界がある.たとえ,ハイレベルに成長した中間層が将来たくさん増えても,現代の資本主義的な「無理が積もってきた欧米系の人間社会」では,解決できることにも限りがある(※ 昔の封建社会や共認社会に,システムを回帰させるという手もあるかもしれない).

[重要な点] そして,日本社会では,トップ層の支援ばかり集中的におこなってしまい中間層から下の層への支援や強化を,中途半端にしがちであるという傾向があると考える.これは,コンピュータビジョン業界以外も抱える,「戦後日本の根本的な問題」の1つであると考える.2極化して中間層がいないと,「中間層の充実によって支えられる,良いものへの正統な高い評価(=批評の目)が育たない」という状況にも陥りやすいので,良いものが評価されづらいという根本問題がある.声が大きいだけで(批評の土壌がないから)勝ってしまい,また,弱者をかえりみず見捨てて自分だけ勝っている人も増えてしまいがちである.

以上のようなことから,私は,日本の国全体が「中流層の人口が多い」バランスを取り戻すことが,国の最優先課題であると考えている.ただし,バブルの頃のように,世界トップ企業だらけになってしまうと,また世界から嫌われる気がする.そこそこの経済的な復活ができれば良いのではと個人的に思う.

ちなみに「遊び心や,時間や空間のゆとりが足りていない」という点も,人口が都市集中型である日本の課題として感じる.モノからコトの世界になっていった現代だからこそ,日本ならではの美意識や,精神性,風習や価値観などでも,各々が日本社会や他国に貢献していけると良いと考える.よって,「風流」や「人情」の復活も地味にカギであると思う(これは、このサイトで達成できる改善項目ではないかもしれないが)

4. 本当は,直接コーチングするサービスを提供したいのだが…

コーチングは,やはり直接対面で行うのがベストである.このサイトや,今後提供していく予定の動画講座や本など,一方通行の情報提供だと,対面性が確保できないので,貢献できる度合いに限界がある.

また,親ページでも述べたように,私の学生や部下を担当する際のコーチング方針は「即実践」である.実際に研究開発してもらう中でさっと身に付けてもらうのを,横で私が黙って見守っているというのが,自律的な専門家になってもらうにはベストだと思っている.とはいえ,やはり「テキスト」や「教科書」など,学ぶ時の資料が私の理想とするのに近いものがないと,理想的な学習環境を提供しづらいジレンマがこれまであった.

従って,まずはこのサイトの構築を通して,私独自の「テキスト」の構築を充実させていくことから優先している.それにより私自身の各知識への理解度を高めていくなかで,徐々に,コーチング業や動画講義・電子書籍などの提供を始めたい.

昔から愛用している文献管理ソフトウェア上に,このサイトの各記事の元となっている,より強力で大規模な論文データベース・メモを構築している.現状は,このサイトと裏のデータベース両方の構築を通じて,私の「裏のナレッジデータベース」の質も高めている最中である(※ 2022年1月時点).それを元にして,今後は動画コースや,書籍などにもアウトプットし,皆様に提供していきたい.

とはいえ,やはり直接やり取りを行う形式のコーチングに勝るものはないと考えている.既に現状のお客様企業にはコーチング的なものを行ってはいるが,まだ表向きに屋号を持って,メインの生業としているわけではない.将来的には,コーチング専門の人を私以外にも雇ったうえで,企業や大学へのコーチング業も始めたいところではある.